今回は企業が多様性を取り入れることの意味を解説していきたいと思います。
なぜ日本でダイバシティーが機能しないのか
ダイバシティー(多様性)の重要性が訴えられてから久しくなりましたが、日本企業で多様性を上手に取り込めている企業は少ないのではないでしょうか。
多くの企業は女性登用や外国人を採用することに満足し、実際にその効果が何なのかを感じ取れずに、ダイバシティーを導入している企業が多いように思います。
それは多様性の価値が異質なものを議論させることにより新しい考えがその間に生まれるというファンタジーを信じているからだと私は考えています。
本当の多様性の価値が発揮するのは人と人が対話することでどちらかの人に新しい価値観や物事の見方・考え方が生まれるからです。
最終的に企業に価値をもたらす多様性は複数人の多様性ではなく、一人の人として多様性をどれだけ持てているかという個人の多様性(イントラパーソナルダイバシティ)になります。
表現が感覚的でわかりにくいかもしれませんが創造・アイデアとは、人と人の間に生まれるのではなく、一人の人の中に新しい考え方は生まれるのです。
言葉を濁さずに言えば、多様性のある集団を組織するのは、個人の多様性を育てるための一つのプロセスに過ぎません。
そのため、上部だけのダイバシティーを導入し、採用目標数を掲げただけでは組織文化は変わりません。
ダイバシティーを導入する前にその土壌を整えておく必要があります。
ダイバシティー導入前に3つの土壌を整える
日本企業がダイバシティーを導入してもうまく行かないのには次の3つの土壌が整っていないからだと思います。
- 組織体制:ピラミッド体制の罠
- 知的・人的資産:見えない資産の軽視
- 個人:他人への傾聴
組織体制:ピラミッド体制の罠
まず一つ目は日本組織にはびこるピラミッド構造の組織体制となります。
多様性を取り入れることは、新しいビジネスモデルやアイデア・生産性の向上が大きな目的と思いますが、ピラミッド型の体制では結局、上層部が判断をすることにより既存の考えの中で選択をすることの方が多くなります。よく組織はトップ(上司)の器以上に大きくはならないと言われるものです。
同じものを大量生産する効率重視の経営において同一性を重視するピラミッド体制は機能しましたが、新規ビジネス創出を目的とした多様性とピラミッド体制は相性が悪いと言わざるをえません。
多様性を取り入れる上では、少人数制やティール組織等の組織体制から見直す必要があります。
知的・人的資産:見えない資産の軽視
日本企業は財務諸表に映る資産にしかまだ目がいっていない企業が多いように思います。
財務諸表はもちろん重要ですが、それ以上に知的・人的資産という見えない資産が今後、重要になってきます。
見えない資産を軽視または全く意識をしていない企業が形だけ多様性を取り入れてもうまくいきません。
”知の深化”と”知の探索”という考え方があります。
”知の深化”は既存事業をどのように維持・拡大するかという考え方であり、”知の探索”は新規事業に向けたリサーチ・研究を意味します。
日本企業は目の前の数字に追われており、”知の深化”にばかり目を向けています。これは見える資産のみにしか注目できていないことを意味しています。
成功している企業は”知の深化”と”知の探索”の両利きの経営をしているという研究結果も多数あります。
目に見えない資産に注目することが”知の探索”への第一歩になります。
個人:他人への傾聴
最後に他人への傾聴の姿勢です。
”自分が必ず正しい、私は何でも知っている”思い込みを捨て、フラットな姿勢で他人の意見を傾聴する姿勢です。
これは企業文化もあり、個人の資質もあると思います。
”バカ”とは知識が少ないことではなく、自分は知らないことはない、自分が一番賢いと思い込み、他人の意見を聞かないことだと思います。ソクラテスの”無知の知”です。
人は意識をしていないと自分が何でも知っていると思い込みをしてしまうものです。常に”無知の知”を意識し、他人を尊重した姿勢が求められます。
”バカ”が集まった集団ではどれだけ多様性を取り入れても傾聴がないため、そこから新しいアイデアが生まれることはありません。
まとめ
以上のような土壌が整った職場にしか本当のダイバシティーは根付きません。
このような土壌が整った場所にダイバシティーを取り入れることで、会社にとって見えない資産である人が育ち、知的財産が膨らみ、新しいビジネスモデルが創造できるようになります。
表面だけのダイバシティー導入は無駄に終わり、コストだけが組織にかかる結果になるでしょう。
もし多様性を導入しようとしている、または現時点でうまく機能していないのであれば、ダイバシティーの本質に一度目を向けてみてはいかがでしょうか。
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